ワンオペ育児。

妻が元気な頃、女が集まると何故か亭主の悪口が多いので私も適当に話を合わせ,お父さんは小生意気で面倒くさい男と話しているからと言っていました。

何事にも几帳面なお父さんを知っている人は『ご主人と一緒は大変でしょう』と言われるので『そうね大変よ』と話を合わせているからね! と言いながら女の世界の出来事を私に話しておりました。

妻は内気で口数の少ない、外では黙って聞いているタイプなので『いいよ』と言っていましたが、ある時家庭内暴力の話を聞いてきて、あんなおとなしい人が暴力を振るうと驚きながら『一緒に暮らしてみないと男も女も本性は判らないね』と言い、『お父さんは小生意気でひねくれているから大変に見えるけど、一緒に暮らしていると変な所が優しいから助かる』と、何かにつけて生意気を付けて話します。

この時に逆説的に考えると判り易いと話し『自分に甘く優しい人ほど他人には厳しくケチな人がほとんどでは? 逆に自分に厳しい人は他人に優しいのでは?』と言うと『なるほど』と頷き『人は寄り添ってみないと本当に判らないね』と言っていました。

自分に厳しい人は、他人に同じようにしろなどとは言わないもので、逆に他者の長所を褒めて伸ばしながら、自分の毎日の姿勢で他者に内省を期待し願うのみで、じっと待ち決して強制はしないものです。

そして相手が内省し成長が見えたら、褒め感謝するので共感の喜びに繋がり絆が深まり強くなります。

最近の共働き世帯の状況を『ワンオペ育児』という言葉で表現し、ネットで飛び交っているそうです。

ワンオペ(一人作業)とは外食産業で使う言葉で、深夜の店舗運営を一人で行う意味ですので、ワンオペ育児とは妻が仕事から帰宅後に保育園の迎えから炊事・洗濯・掃除をこなし、子育てを全て一人で行う妻が、協力しない夫に対して皮肉った言葉です。

勿論この言葉に実感を持つ人の夫は、きっと家事も育児も協力をしない自分には甘い人なのですが、これにはサービス残業の複合汚染も遠因にあります。

現代社会ではサービス残業が当たり前で、妻には理解されない出世競争で深夜帰宅も多く、夫には夫の言い分があり休日もぐったりで協力しません。

家事も育児も経験してみて初めてその大変さが理解できるのですが、やらない男には妻の大変さは理解できないのと、古い男尊女卑の男に都合のよい文化の考えが頭にありますが、どちらかが爆発して安易な離婚になり子供が犠牲になる可能性も増えます。

しかし電通問題のように、気持ちが有っても出来ない状況の人もおりますし、充分に時間と暇があってもしないブラックな人もおり、事情はそれぞれですが格差進行も大きな一因で、若年層では共働きでないと生活できないような家庭も増加してます。

ネットのつぶやきが世間には見えない家庭状況を現わしているもうひとつが、夫婦のどちらかが癌のような重い病気になると、さっさと逃げるような伴侶の増加による離婚も増えていて、どちらも夫婦というお互いの存在が目的ではなく、手段として存在しているようなちょっと悲しい夫婦関係もあります。

私も現実に見たのですが、奥様が癌になり闘病中に夫が別な女性の所に逃げ、離婚届けが送付されてきたと泣きながら私に話された方がおりました。

家を離れた大学生の息子さんと中学生の娘さんがおりましたので、抗がん剤治療が終わると又勤めに出ておりましたが、ある時その奥様に『高野さんの所で働きたい』と言われ、戸惑いましたが私は借財返済と娘の仕送りで応えられないとお詫びしました。

そんな経緯があったので、定休日に甘い物を買う時その方の家にも時々届けたのですが、ある時娘さんだけ家におり『ルタオだ!』と喜びながら、今母は入院しているので、明日病院で母と一緒に食べますとお礼を言われ胸が痛みながら別れました。

翌日お母さんが病院の公衆電話から弱り切った声でお礼の電話が来たのですが、その翌日にお母さんが亡くなったと、葬儀終了後に娘さんが叔母さんと知らせに来た時は何とも言えない気持ちでした。

その後娘さんは叔母さんに引き取られ、今その娘さんは看護師になり立派にやっていますが、結婚していないので男性不信でないか? が一番心配です。

その女性の穏やかな芯の強い人柄を想い出すたび、妻の『人は寄り添ってみないと判らないね』という言葉の重みを感じますが、私は十年付き合っても判らないことが、たった三日でも一緒に暮らした方が人間の本当の姿が判ると思っているので、結婚の決断は一度同棲してからの方がいいと思っています。

そして仕事における組織や家族関係でも同じことですが、組織の長や家長において自由と権利を持つ人は、金銭的と人間的な義務と責任を果たさなければ長としての資格がないと思っています。

日本では厳しさを伴わない表面的な優しさに称賛すらありますが、優柔不断な優しさは窮地になると義務と責任を放棄しがちですので、違いを見極める目を持たないと選んだ方の責任が後でやって来ます

哺乳類の動物のオスは自分の種を残すことだけが仕事で、ほとんどはメスだけで子育てをするのを考えると身勝手は哺乳類のオスの本能では? と妙に納得させられですが、理性を備えた人間ならば夫も子育てや家事などへの協力が求められる時代です。

専業主婦の時代と違い、男が都合の良い所だけ過去の考え方ではやがて女性の心と体が疲弊し、それが子供を健全に育てる可能性も減少させます

結婚は育った文化の違う男と女が一緒に暮らしながら、葛藤や協力を繰り返しながら二人の文化を折衷した家庭を作り上げることに意味があります。

我が家では妻は何かにつけて『あの子は私が生んであなたが育てた子だから、何事もあなたが責任を持つのよ』と確信を持って私に言い、私はいつもその言葉に圧倒され『はい』と答えておりました。

帰宅後遊ぶのも、寝かす時に絵本を読むのも、お漏らしをした時に起きて世話をするのも、家庭訪問や病院の対応も私でしたが、妻の思いは子宮外妊娠後の七年目に授かった娘を、誕生までは流産の危険で入退院を繰り返し無事生んだことで、子供好きの私への責任を果たしたという思いが本当に強く、安堵の気持ちをいつも言っておりました。

女性のように生みの苦しみが伴わない男は、子育ての大変さを体で味わう日常行為を通じて、子供との情愛が育まれるので実は大事なことです。

人間以外の哺乳類で南アメリカ生息のヨザルが、メスの授乳以外の子育てをオスが唯一担当するそうですが、律儀で一生涯共に過ごす一夫一婦制です。

過酷な環境で生き残るための進化では? と考えられているようですが、人間社会も過酷になってきておりますので、人間のオスも進化する時期です。

今迄は男が一生かけて築いた財全てを一人の女性に投資することだけでしたが、これからはヨザルを見習わないと生き残れない時代になったと思います。

私も過剰な借財を背負って、生き残る為に無意識にヨザルになっていたのかも? しれませんが、財の投資より行為を通じたの投資の方が妻子との共感という喜びが伴い実は快は多いと思います。

婿殿を見ていて解決策を思うのですが、残業する日と早く帰宅や平日の休みなどで仕事にメリハリをつけ、自らもワンオペ育児を経験すると、妻の感謝によるまったく違った景色が見えてくることが理解できると思います。

親兄弟以上の年数を共に過ごす一人の女性に、幸せを実感させた手応えを得て老後を迎えている男の人は、家庭と社会の絆も上手く保っていて、話していてもいつも楽しい人で老後が幸せそうで