広がる格差の内的矛盾。

富の偏在と格差の拡大がこれ以上進行すると、その抑圧された感情がテロや犯罪として現れ治安の悪化を招くようになって参りますが、今の先進国のようなほぼ暴力に近い搾取の雇用形態から新しいイノベーションは生まれませんので経済は停滞に向かうのが必然と私自身は懐疑的です。

人類の歴史は進歩と共に格差の繰り返しですが、産業革命以後の発展は富裕層が一般市民への教育や公民権の拡充などで富の還元をして来たからで、それがなければ現代文明の姿も違ったものになっていたと思います。

文明も文化も思想も格差を縮めて裾野を広げることでしか、異能な人を輩出する確率を上げることは出来なく、このパソコンなども大学生が自宅の車庫で開発されたのも教育と公民としての自由度(公民権)が保障されていなければ生まれませんでした。

つまり一部富裕層だけで起こすイノベーションでは経済は衰退することになるから教育の機会の平等を計るようになったのです。

しかし根本的な問題は利己主義という『人間の性』の中にあるように思います。

私が子供の頃は労働組合があり、経営側への闘争手段として従業員がストライキをして経営者を困らせ、その交渉手段を使って搾取の歯止め役を果たしておりました。

しかし次第に国鉄の動労や国労や日教組などの組合幹部は、その交渉手段を私的に悪用し始め、義務と責任を軽くしたり放棄したりして自由と権利だけを主張するようになり、そして私腹を肥やし始めました。

昔の日産自動車の労働組合会長の塩路氏はクルーザーを持つ程に贅沢な暮らしをしていて、会社の人事にまで介入するほどの強大な権力を誇っていましたが、それは組合員(従業員)が資本家(社長)の言う事より組合会長の言う事を聞いたからです。

炭鉱閉山までの組合幹部も絶大な権力を振るっていましたが、やがて時間と共に組合幹部と経営者側(資本家)の裏取引と癒着が理解され始め、従順な組合員の減少と共に様々な価値観の考え方も増加し始め労働組合の組織力は激減してしまい、現在はほとんど形骸化しているのが実情と思います。

その果てが今の状況で、今度は経営者側が権力を増大し始めて内部留保を蓄え、派遣法を政治家に迫り正規社員を減少させ、利益は経営層の役員賞与や持ち株による分配などの一般社員の目の届かない方法を使って従業員との所得格差をより広げ、グローバル経済化と共に企業は巨大化を計り従業員にはトリクルダウン(おこぼれ)で済ますことに慣れきり、富の偏在に優越感すら持つ倫理観の有様で全て二世・三世に引き継がれ、富と貧困の世代連鎖の異常な事態に対して国民も半ば諦めで麻痺しています。

韓国大韓航空の二世(副社長)の娘のように、事件になって立場が逆転すると反動で突然異常に吠えだし怒り狂います。

丁度お金が欲しい時に見苦しい程に下出に出て迎合するような人が、立場が逆のお金を使う立場の時に高圧的になるのと同じです。

人間にとって一番大切なものはバランス感覚なのですが、どちらに行っても過剰な方に流されるのは欲望のなせる業で、このバランスを保つ為に必須のものが民の教育と機会の平等ですが、今の日本の貧困層の子供達に教育の機会すら失われ始めている状況は本当に危機的状況と思います。

社会の活力に必須なイノベーションの増大の為には、富の循環を進めて裾野を広げる以外に道はないと富裕層を自覚させる思想の出現が待たれます。

今自分が生きている時代が豊かであれば良いと言う超利己主義の蔓延から早く抜け出さないと、格差拡大から成長の停滞と分配をめぐる闘争の激化で犯罪やテロが増加し、やがて社会を不安定なカオスの時代に導いてしまいます。

人間の本当の幸福とは何か? の問いの答えがお金だけではないと思うのですが、お金万能の資本主義に代わる新しい思想がもう必要な時代になっています。

歴史的に新しい思想は辺境からやって来ますので、その思想が生まれた国が次の時代の覇権国になるように思います。

格差を克服できないのは人間社会の歴史ですが、それでも少しづつですが前に進んで改善して来ていることに希望を持っています。

立場が変わると欲望と言う利己主義の肥大が抑えられない、人間自身の矛盾の中に理由があるように思いますが、それを克服する為に人間には思想や哲学があるので、そこに救いを求めたいと思っています。