過干渉という毒親。

最近の書籍で過干渉『毒親』という言葉に思わず反応して調べてみると、漫画家や元アナウンサーや女優の娘など多くの主に女性がその親との経験談を漫画や本で出版しています。

内容で共通していることは、子供をいつまでも支配し続ける親からの苦悩を描いていますが、『うちの親はおかしいのでは?』と思っても、子供が自分の親を否定することに大きな罪悪感を持ってしまい、逆に自分自身を否定しがちになってしまうことも共通です。

私自身も父がそのタイプの人で、扶養されている間は当然で結婚後も家庭の中や果ては金銭的介入(依存)も酷かったのですが、父の死後母から聞いた夫婦間の実態には絶句させられました。

私が物心ついた時から父は家庭の中の支配者で母は腫物に触わるようで、感情の起伏が激しく家の中では全てが自分の思い通りでなければ機嫌が悪く、そしてこの毒親の本の中身と同じでいつも最後に『お前・あなたの為』と真綿で首を絞めますので、そんな親の元で育つと分裂病や鬱病の発病因子になってしまいます。

そんな支配から逃れる為に、短大を出て東京に就職してから自分に忠実な社会生活の中で私は世間から認められ、初めて自分自身に自信を持てたのを鮮明に覚えています。

その後その自信を胸に帰郷しお茶の行商二年を経てプレハブ店舗を持ち、十年後に今の店舗を持ちましたが、その十二年間の過干渉は私の妻子にまで至りました。

しかしその後も父の依存と過干渉は続き、私の家庭生活や経済状況にも支障が出るほどにまでなり、こちらから父に勘当を告げ七年程絶縁状態を維持しましたが、その時の父の言葉は『お前なんか潰れてしまえ』の捨て台詞でした。

そんな生き方の両親が七年後に病気や孤立の状況になり、見かねて許す趣旨を妻に話しましたが、それまでの金銭的・精神的な苦悩を私と共に過ごした妻の同意を得るのは大変でした。

最終的に私は『あなたと結婚し家庭を持ってから、初めて本当の幸せを実感できた。 でも両親から生れていないと、この人生もないので恨んだり憎だりした所で人生止めないで、私達の人生を前に進める為に許そう』と話して妻が了承してくれました。

それでも父は最後を迎えるまで本質的には変われず、最後は家族から孤立した可愛そうな人生だったと思います。

本質的に支配・干渉が激しい人は人間的に弱い自信のない人で、寂しい孤立しがちな人がほとんどです。

大平健という精神科医が書いた『サド・マゾの依存』という本の記憶ですが、DVなどの暴力的な人は弱者に暴力を振るうことでしか自分の強さを確認できない人で、実態は弱者への依存で自分を維持している真に弱い人なのだと思います。

このような恥部を出版する勇気ある行動が主に女性という所にも、面子にこだわる男の弱さと対照的に腹の座った強い女性が増えて来た証拠です。

育った文化は連鎖しがちですので、そんな毒親の過干渉で子供夫婦が離婚に追いやられた人達もいるのでは? と思っています。

親世代が経済的豊かさと長寿を手に入れた代わりに、次世代には子の自立を阻む過干渉と格差社会の現実が待っていたでは皮肉が過ぎます。

他人に言われても傷つくような罵りの言葉を、親族や特に親に言われる苦しみは本当に味わった者にしか判らないと思います。

基本的にそんな親の根にあるものは、子供を自分の所有物のように捉えていることだろうと思います。

このような本には自分の恥部を告白することで自分の人生を再確認し再出発に繋げる意味もあるのでしょうが、私は同じ状況で苦しんでいる多くの人達の光と勇気になる側面の方を期待しています。