愛は技術。

不況は深刻で私の商店街も閉店が続き寂しい限りです。  それより寂しい気持ちになるのは、人の気持ちも荒んで傷つけられる機会が多くなった事です。 

私はこんな時ほど家庭の中で癒し癒される空気を作り出す努力が大切と思い英国の哲学者フロムの『愛は技術である』を呪文のように唱えております。 

題名『愛するということ』の最初に出てくるこの言葉に衝撃を受け読み進み、以来少しでも言葉や生活態度を通して人を愛する技術を磨きたいと思って過ごして来ました。 

フロムはスポーツでも職業においても知識を得て技術を磨くように、人を愛する為にも技術を磨かないといけないと夫婦・親子・身の回りの人達などへの配慮を技術の獲得と表現しています。 

精神分析で愛と憎しみの関係では、憎しみの方が根源的なものと言っています。

次に持ち合わせた本体的な愛を育てるには、憎しみを抑えて愛を自分自身が育てる以外に方法は有りません。

フロムはその愛を育てることを技術を身に付けると捉えていることが斬新でした。

自分自身の愛をどれだけ言葉や態度や姿勢で表せるか? 

人を愛する事は自分を知り、自分自身を愛することなど、性も含めた人を愛する為の技術の習得の大切さを述べていました。

娘には大学入学時に読んで欲しいとお願いし渡しましたが、今も娘はバイブルにしていると何度も読んで、人生経験を重ねるたびに理解が深まると話してくれました。 

『生きるということ』・『悪について』・『自由からの逃走』などの題名の本にも一貫して人間の本質と進むべき方向を考察した人で、特に人は辛く厳しい自己実現と成長が阻まれた時に、一種の危機に陥り攻撃性や権威主義に向かう危険を警告していました。 

不況や震災が重なり経済も財政も疲弊し、社会も人心も疲弊しているのが今の日本の社会状況ですが、こんな時ほど繁栄した過去を懐かしむのを止め、この現実を受け入れ自分達が試されていると考え、弱い自分自身を信頼する人に曝け出して、そこから誰もが生産的に生きる為に、相手に望むものを自分が先に贈与するように努める以外に道は開けないのでは? と思います。