自分を一番大切に。

行商から数えると四十年近くなり、ここまで長い期間を固定客で商いを続けてこられたことに感謝ですが、それぞれのお客様の人生も一緒に見守って参りました。 四十代の方が八十代になり冬道は心配なので、『電話をもらえれば、届けます』と言っても昔の人は『これくらいで申し訳ない』と危なげな足取りでやって来ます。

現在は一人暮らしの人も多く、なるべく明るくなるような卑猥な話も織り交ぜて話している間に本人の様子と天気を見て、心配な人は妻に店を頼んで車で送って行きます。 

辞退しても、車に乗せ『年取れば、転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け』と岸信介元首相の含蓄ある口癖も覚えておくことを、お願いしています。

四~五人家族だった人達が一人暮らしになるまでを見守ってきて思うことは、家庭の平和は家族が健康でいることで実は初めて維持されているとつくづく実感させられたことです。 お金や地位があっても、高学歴の家庭でも、家族の中に一人でも病人が出ると団欒と平和は一瞬で崩れさります。 

発病は遺伝的なものとストレスですが、限度を越えた風船の弱い所が破れて穴が開くようなものです。 

私は気管と腎臓に弱点があるので、冷えと疲労に注意しある限界を感じたら妻に『今日は早く寝ますので、消化のいいものをお願いします』と伝えます。 

自営業は日雇い労働者と一緒なので、自分が健康でいることを最優先に考えることが、実は一番家族の為になることに繋がるからです。 

中腰の仕事が多い私は腹背筋鍛錬と水泳を習慣にしています。 

相手を思う事も大切ですが、限度を越えて頑張り過ぎ家族に負担と迷惑をかけては逆効果です。

自分を一番愛し、時には薄情の情けに徹して甘える事も実は深い家族愛に繋がると思っております。